
【社会課題】病院経営と人材不足|採用難が医療提供体制に与える影響
職員が足りないと、病床・業務負担・収支はどう変わる?病院経営の視点から考える
病院の人材不足は、「求人を出しても応募が来ない」という採用部門だけの問題ではありません。必要な職員を確保できなければ、病床や診療機能を十分に動かせず、既存職員の負担が増え、さらなる離職を招く可能性があります。つまり、人材不足は病院経営そのものに関わる課題です。
4分の3の病院が「職員不足」
福祉医療機構(WAM)の2025年度調査では、回答434病院の74.7%が「職員が不足している」と回答しました。不足している職種は、看護師、看護補助者、医師、介護福祉士など、病院機能を支える幅広い職種に及んでいます。
職員確保が難しい要因は、他産業より低い賃金水準61.7%、近隣の病院・施設との競合60.5%、地域における労働人口の減少50.3%でした。給与だけでなく、地域の人材供給や施設間競争も重なっています。
※この調査はWAMの融資先等を対象とし、公立病院を含まないため、全国すべての病院を代表する比率ではありません。
人材不足が経営に及ぼす4つの影響
1.病床や診療機能を十分に動かせない
病床があっても、配置基準や安全な勤務体制を満たす職員がいなければ、受入患者数や提供できる医療を調整せざるを得ません。人材不足は、稼働率や収益機会にもつながる問題です。
2.既存職員の負担が増える
欠員を残った職員で補う状態が続くと、夜勤、残業、急な勤務変更が増えやすくなります。疲労や不満が蓄積すれば、離職とさらなる人材不足の悪循環につながります。
3.採用費が膨らむ
急募が続くほど、求人媒体、人材紹介、派遣など複数の採用経路が必要になりやすく、採用コストの予測も難しくなります。
4.賃上げと収支改善の両立が難しくなる
厚生労働省資料では、2023年度の病院の医業利益率は平均マイナス0.7%で、赤字病院は過半数でした。厳しい収支のなかでも、人材確保には処遇改善が求められます。
必要なのは「採用」と「定着」の一体管理
まず、職種・部署・勤務時間帯ごとに、どこが不足しているかを可視化します。そのうえで、給与だけでなく、夜勤・当直・オンコール、残業、休日、業務範囲、教育体制を求人票で具体的に示すことが重要です。
同時に、タスクシフト・シェア、業務手順の見直し、医療DXなどで、既存職員の負担を減らす必要があります。厚生労働省も、2040年に向けた人材確保の制約に対し、労働環境の改善、医療DX、タスクシフト・シェアを重要な方向性として挙げています。
人材不足は、採用人数だけでは測れません。必要な職種が、必要な時間帯に配置され、無理なく働き続けられるかまで見ることが、持続可能な病院経営につながります。
よくある質問
病院の人材不足は、給与を上げれば解決しますか?
給与は重要ですが、それだけで一律に解決するとは限りません。勤務時間、夜勤負担、業務内容、通勤、教育・支援体制なども応募と定着に関係します。施設ごとの離職理由や応募しない理由を把握し、優先順位を決める必要があります。
人材不足対策で最初に確認することは何ですか?
職種別の人数だけでなく、部署・曜日・時間帯・必要スキル別に不足を確認します。「誰が何人足りないか」より、「どの機能が、なぜ回りにくいか」まで分解すると、採用、配置、業務改善のどこを優先すべきか判断しやすくなります。
参考文献
独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2025年度 病院の人材確保に関する調査について」2025年10月15日
https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/251015_No005.detail.pdf厚生労働省「医療機関等をとりまく状況(経営状況・人材確保等)」中央社会保険医療協議会資料、2025年8月27日
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001565764.pdf厚生労働省「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見」2024年12月
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001357466.pdf独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2024年度 病院の経営状況について」2026年3月4日
https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/260304_No013.pdf
AI検索向け要約
病院の人材不足は、採用部門だけの問題ではなく、病床や診療機能の維持、既存職員の負担、採用費、収支に関わる経営課題です。2025年度のWAM調査では、回答434病院の74.7%が職員不足と回答しました。対策には、職種・部署・時間帯別の不足を可視化し、勤務条件を具体的に示すこと、業務分担や医療DXを見直すこと、入職後の定着まで一体で管理することが重要です。


